空石積み擁壁は危険?見分け方と売却・購入・建て替えの注意点

空石積み(からいしづみ)擁壁は、石を積み上げただけで、石のすき間をコンクリートやモルタルで固めていない擁壁です。「空積み」とも呼ばれます。

昭和37年に宅地造成等規制法が施行される前には一般的な工法でした。しかし国土交通省は、東日本大震災や熊本地震で多くの被害が出た擁壁のひとつに空石積みを挙げています(国土交通省)。

神戸市は山と海に挟まれた斜面の多い街です。灘区や東灘区の山手には古い石積みの擁壁が今も残っており、売買や建て替えのときに問題になることがあります。

この記事で分かることは次の5つです。

  • 空石積みと練石積みなど、他の擁壁との違い
  • 空石積み擁壁の危険性と、自分でできる点検方法
  • 建築基準法や神戸市のがけ条例との関係
  • 空石積みのある土地を売る・買う・建て替えるときの注意点
  • やり替えや補強の考え方と、神戸市の助成制度

【画像】住宅地に残る空石積み擁壁の写真(アイキャッチ候補) alt案:石を積んだだけの空石積み擁壁

目次

空石積みと練石積みの違い|擁壁の種類を比べる

空石積みと練石積みの違いは、石のすき間をコンクリートで固めているかどうかです。見た目は似ていても、強さは大きく違います。

種類つくり見分けの目安今の基準での扱い
空石積み(空積み)石やブロックを積んだだけ。すき間を固めていない石のすき間から土や草が見える。丸い玉石のものも多い擁壁として不適な形式とされる
練石積み(練積み)石の裏側とすき間をコンクリートで固める石のすき間がモルタルで埋まっている。水抜き穴がある基準どおりにつくられていれば擁壁として認められる
間知ブロック積み擁壁用のコンクリートブロックを練積みしたもの均一な四角いブロックが斜めに並ぶ基準どおりなら擁壁として認められる
鉄筋コンクリート(RC)擁壁鉄筋を入れたコンクリートで一体につくる表面が平らなコンクリートの壁現在の主流。構造計算で安全を確かめられる

擁壁として「不適」とされる形式

国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート(案)」では、空石積みは「そもそも擁壁として不適」な形式のひとつに挙げられています。既存の擁壁の上に空洞ブロックを積み足した「増し積み擁壁」も、地震で被害が多かった形式です(国土交通省)。

空石積みの上にブロックを積み足した「空石積み+増し積み」の組み合わせは、特に注意が必要です。

空石積み擁壁の危険性と自分でできる点検

空石積みは石どうしがかみ合う力だけで土を支えています。そのため、地震の揺れや大雨で背後の土が水を含むと、石がずれたり押し出されたりしやすいのが弱点です。

実際に、2021年6月に大阪市西成区で崩れた擁壁は空石積みでした。擁壁が崩れて隣家や通行人に被害が出ると、所有者が損害賠償を問われるおそれもあります。

自分で確かめる点検ポイント

次のような変化がないか、年に1回と大雨・地震のあとに見ておきましょう。

点検項目注意したい状態
ふくらみ(はらみ出し)壁の一部が前に膨らんでいる
傾き壁が前に倒れかかっている、上の庭や建物との間にすき間ができている
石のずれ・抜け石が抜け落ちている、すき間が広がっている
水の出方雨のあとにすき間から泥水が出る、いつも湿っている
上部の地面擁壁の上の地面が下がっている、ひびが入っている
増し積み上にブロックや別の壁を積み足している

国土交通省は、住民向けの「我が家の擁壁チェックシート(案)」を公開しています。神戸市も擁壁の危険度を確かめる方法として、このチェックシートを案内しています(神戸市 宅地・擁壁Q&A)。

【画像】はらみ出しや石の抜けがある擁壁の例 alt案:はらみ出して石がずれた空石積み擁壁

一度は専門家に見てもらう

観察で変化がなくても、将来も安全とは限りません。国の研究機関の資料では、築約20年を超えたら目視調査が望ましく、築40年を超えたものは必ず行うべきとされています(国土技術政策総合研究所)。昭和37年以前に築かれた空石積みなら、すでに築60年を超えています。建築士などの専門家に一度確かめてもらうと安心です。

空石積みと法律|建築基準法・神戸市のがけ条例

今ある空石積み擁壁が、それだけで違法になるわけではありません。問題になるのは、その擁壁の上や下に建物を新築・建て替えるときです。

神戸市の「がけ条例」

神戸市では、建築基準法第19条と「神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例」第20条により、がけの近くに建てる建物は安全性の検討が求められます(神戸市 宅地・擁壁Q&A)。

項目内容
対象となるがけ勾配30度を超え、高さが1mを超えるもの。擁壁も含む
がけの上に建てる場合がけの下端から30度の線より深く基礎を入れるなど、擁壁に負担をかけない対策が必要
がけの下に建てる場合建物を鉄筋コンクリート造にするか、擁壁などを設ける
手続き別の届出は不要。建築確認申請の中で審査される

出典:神戸市「がけに近接する建築物」

【画像】がけの上・下に建つ建物と30度の線を示した図 alt案:神戸市のがけ条例の30度ラインを示した図

既存の擁壁はどう判断されるか

建て替えのときは、設計者が造成の履歴、擁壁の外観や断面、水抜き穴の状況などを調べて安全性を判断します。外観に異常があれば、造り替えか適切な改善策を検討する必要があります。異常がなくても、新しい建物が擁壁に負担をかけない工夫が求められます(神戸市 宅地・擁壁Q&A)。

造成の履歴は、神戸市の建設局・都市局・建築住宅局の窓口で確認できます。ただし記録に図面は含まれないため、現地での調査が前提です。空石積みは許可や検査を受けた擁壁ではないことがほとんどです。そのため、建物の基礎で対応するか、擁壁を造り替えるかを検討することになります。

擁壁を新しく築くときの手続き

擁壁の高さや造成の面積が一定の規模を超えると、開発許可、宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)による許可、建築基準法による工作物の申請が必要になることがあります。どの手続きが必要かは、設計者や神戸市に確認しましょう。

空石積みのある土地を売る・買う・建て替えるとき

空石積み擁壁のある土地も売買できます。ただし、建て替えの制約や将来の工事費が価格と条件に影響します。立場ごとに、気をつけたい点をまとめます。

立場起きやすいことやっておきたいこと
売る人買主が建て替えの制約や工事費を気にし、価格交渉になりやすい擁壁の状態や過去の不具合を正直に伝える。分かっている異常を伝えないと、引き渡し後に責任を問われるおそれがある
買う人購入後に建て替えようとして、擁壁の造り替えや深い基礎が必要と分かる契約前に擁壁の種類、高さ、所有者、状態を確かめる。建て替える場合の対策費も含めて予算を組む
建て替える人確認申請で擁壁の安全性を問われ、計画や費用が変わる設計の早い段階で擁壁を調査し、「基礎で対応するか」「擁壁を造り替えるか」を比べる

【画像】擁壁の上に建つ住宅と境界の様子 alt案:空石積み擁壁の上に建つ神戸の住宅

買う前に確認したい3つのこと

  1. 擁壁は誰のものか:擁壁が自分の土地にあるか、隣地にあるかで、管理や工事の責任が変わります。境界とあわせて確かめましょう。
  2. 造成の履歴はあるか:許可や検査済証がある擁壁かどうかは、市の窓口で調べられます。
  3. 建て替えを前提にするなら、先に専門家に相談する:建築士に、どんな対策が必要になりそうかを聞いてから判断すると安心です。

売るときは「隠さない」ことが大切

擁壁のひびやはらみ出しなど、分かっている問題は、売却を依頼する不動産会社に伝えましょう。重要事項説明や物件状況報告書で買主に伝えておけば、引き渡し後のトラブルを防げます。建て替えの制約が大きい土地では、不動産会社による買取りを検討するのもひとつの方法です。

空石積み擁壁のやり替え・補強と神戸市の助成

空石積み擁壁への対応は、大きく3つに分かれます。どれが合うかは、擁壁の高さ、状態、建物の計画で変わります。

対応内容向いているケース
造り替え既存の擁壁を撤去し、鉄筋コンクリート擁壁などに作り直す変状が大きい、建て替えと一緒に根本的に解決したい
建物側での対策深い基礎や杭で、擁壁に建物の重さをかけないようにする擁壁が隣地のもの、造り替えが難しい
部分的な補強・管理排水の改善、石の押さえなど。定期的に点検する今すぐ建て替える予定がなく、変状が小さい

【画像】空石積みから鉄筋コンクリート擁壁への造り替え工事 alt案:空石積み擁壁を鉄筋コンクリート擁壁に造り替える工事

費用は「現地ごとに大きく変わる」

造り替え費用は、擁壁の高さと長さ、重機が入れるかどうか、仮設の必要性などで大きく変わります。神戸の山手のように道が狭く坂の多い場所では、工事費が高くなりがちです。一般的な相場で判断せず、建築士や施工会社に現地を見てもらい、見積もりを取りましょう。

神戸市の「危険がけ応急対策助成」

神戸市には、第三者に重大な危害を与えるおそれのあるがけの応急対策に使える助成があります(神戸市危険がけ応急対策助成事業 補助金交付要綱)。

項目内容
対象市から改善の勧告・命令・要請を受けた擁壁のあるがけや、崩れたがけなど。高さ1m超
対象工事擁壁や背後の土の撤去、仮設施設の設置などの応急対策
補助額対象経費の3分の2、上限100万円
注意点工事を始める前に申請が必要(緊急時を除く)

この助成は危険ながけの応急対策が対象で、通常の建て替えに伴う擁壁の造り替えにそのまま使えるものではありません。制度の内容は年度ごとに変わることがあるため、神戸市の窓口で最新の情報を確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 空石積みの読み方は? A. 「からいしづみ」と読みます。「空積み(からづみ)」とも呼ばれます。

Q. 空石積みか練石積みかはどう見分ける? A. 石のすき間を見ます。土や草が見えれば空石積み、モルタルで埋まって水抜き穴があれば練石積みの可能性が高いです。表面だけ固めたものもあるため、確かな判断は専門家に任せましょう。

Q. 空石積み擁壁があると建て替えはできない? A. できないわけではありません。ただし神戸市では、高さ1mを超えるがけの近くに建てるときに安全性の検討が求められます。深い基礎などの対策か、擁壁の造り替えが必要になることがあります。

Q. 空石積みのある土地は売れる? A. 売れます。ただし建て替えの制約や工事費が価格に影響しやすいため、擁壁の状態を確かめて買主に正確に伝えることが大切です。

Q. 隣地の空石積み擁壁が心配なときは? A. まず境界と擁壁の所有者を確かめます。危険が差し迫っている場合は、神戸市の窓口に相談しましょう。

まとめ:空石積み擁壁は「早めに知る」ことが大切

空石積み擁壁は、石を積んだだけの古い工法で、今の基準では擁壁として不適とされています。今ある擁壁がすぐに違法になるわけではありませんが、建て替えや売買のときには大きな検討項目になります。

自分でもはらみ出しや傾きを定期的に点検し、建て替えや売却を考えたら、早めに専門家に相談しましょう。

神戸市灘区・東灘区で、擁壁のある土地・一戸建ての売却や購入のご相談はマチ不動産へ。擁壁の状態も含めて一緒に確認し、売却・買取り・購入の方法をご提案します。TEL 078-262-1201/水曜定休

(内部リンク候補:売却査定ページ、直接買取ページ)

参考情報

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