結論からいうと、専業主婦(主夫)でも、財産分与では結婚してから夫婦で築いた財産の原則半分を受け取れます。収入がなくても、家事や子育てで夫の仕事を支えたことが、財産を築いた貢献として認められるためです。
この記事では、半分もらえる理由、対象になる財産とならない財産、半分にならないケース、請求の期限と手続き、家や住宅ローンがある場合の分け方まで、離婚前に知っておきたい基本をまとめます。
専業主婦でも財産分与が半分になる理由「2分の1ルール」
財産分与の割合は、夫婦の収入の差に関係なく、原則として2分の1ずつです。これを「2分の1ルール」といいます。
夫が外で働いて収入を得られたのは、妻が家事や育児を担って家庭を支えたからだと考えられています。そのため、名義が夫だけの預金や家であっても、結婚してから築いた財産は夫婦の共有財産として扱われます。
2026年4月の民法改正で「2分の1」が法律に明記された
これまで2分の1ルールは、裁判所の実務上の考え方でした。2024年5月に成立した改正民法では、夫婦それぞれの貢献の程度は、違いが明らかでない限り等しいものとすると明記されました(民法768条3項、レガシィクラウド)。この改正は2026年4月1日に施行されています。
法律に書かれたことで、「収入がなかったから取り分は少ない」という主張は、より通りにくくなったといえます。
財産分与の対象になる財産・ならない財産
対象になるのは、結婚してから別居するまでに夫婦で築いた「共有財産」です。どちらの名義かは関係ありません。
| 区分 | 主な財産 |
|---|---|
| 対象になる(共有財産) | 預貯金、家・土地、車、株式・投資信託、生命保険の解約返戻金、退職金(結婚期間に対応する部分)、家具・家電 |
| 対象にならない(特有財産) | 結婚前からの預貯金、親から相続・贈与された財産、結婚前に買った物、別居後に得た財産 |
| マイナスの財産 | 住宅ローン、車のローンなど生活のための借金は、プラスの財産から差し引いて計算する |
退職金も分けられる
退職金は給料の後払いと考えられるため、結婚していた期間に対応する部分が財産分与の対象です。まだ退職していなくても、将来受け取る見込みが高ければ対象になることがあります。
年金は「年金分割」で別に分ける
夫の厚生年金は財産分与とは別に、「年金分割」という制度で分けられます。専業主婦(第3号被保険者)の期間は、条件を満たせば夫の同意がなくても2分の1を分割できます。請求には期限があるため、年金事務所で早めに確認しましょう。
財産分与が半分にならないケース
2分の1は原則であり、夫婦の貢献に明らかな差がある場合は割合が変わることがあります。ただし、専業主婦であることだけを理由に減らされることはありません。
- 特別な才能や資格で財産を築いた場合:医師や経営者、スポーツ選手など、本人の特別な能力で高い収入を得ていた場合は、割合が調整されることがあります。
- 特有財産をもとに財産が増えた場合:夫が親から相続した資金で投資して増えた財産などは、その分が考慮されます。
- 一方が浪費やギャンブルで財産を減らした場合:財産を減らした側の取り分が少なくなることがあります。
- 夫婦で合意した場合:話し合いで納得していれば、2分の1以外の割合で分けることもできます。
反対に、不倫やDVなど離婚の原因を作った側でも、財産分与そのものは受け取れます。原因を作ったことへの責任は、財産分与ではなく「慰謝料」として別に扱われるのが基本です。
財産分与の請求期限と手続きの流れ
財産分与は、離婚した日から5年以内に請求する必要があります。2026年3月31日以前に離婚した場合は、これまでどおり2年以内です(デイライト法律事務所)。
| 離婚した日 | 請求できる期限 |
|---|---|
| 2026年4月1日以降 | 離婚から5年以内 |
| 2026年3月31日以前 | 離婚から2年以内 |
期限が延びたとはいえ、時間がたつと相手が財産を使ってしまったり、証拠が集めにくくなったりします。できるだけ離婚前に決めておくのが安心です。
財産分与の手続きの流れ
- 夫婦の財産を洗い出す:預金、家、保険、退職金など、共有財産をリストにする
- 夫婦で話し合う(協議):分け方と金額を決める
- 合意内容を書面に残す:離婚協議書を作り、支払いが分割なら公正証書にしておく
- 話し合いでまとまらなければ調停:家庭裁判所で調停委員を交えて話し合う
- 調停でも決まらなければ審判・裁判:裁判所が分け方を決める
家や住宅ローンがある場合の財産分与
家の財産分与は、まず「家の価値」と「住宅ローンの残高」を比べるところから始まります。家の価値がローン残高を上回るかどうかで、分け方が大きく変わります。
| 状況 | 意味 | 主な分け方 |
|---|---|---|
| アンダーローン | 家の価値 > ローン残高 | 差額(プラスの部分)を2分の1ずつ分ける |
| オーバーローン | 家の価値 < ローン残高 | 家に財産的な価値はないとして、分与の対象から外れることが多い |
家を分ける3つの方法
- 売却して現金で分ける:売却代金でローンを完済し、残ったお金を分けます。公平に分けやすく、離婚後のトラブルも残りにくい方法です。
- 一方が住み続け、もう一方に代償金を払う:子どもの学校を変えたくない場合などに選ばれます。住み続ける側が、家の価値の半分にあたるお金を相手に払います。
- 名義やローンを変更する:住宅ローンの名義変更には金融機関の承認が必要で、収入が少ないと認められないことがあります。
夫名義の家に妻が住み続けるときの注意点
夫名義のローンが残る家に妻と子が住み続けると、夫がローンを払わなくなったときに家が競売にかけられるリスクがあります。妻が連帯保証人やペアローンの当事者になっている場合も、離婚後に返済を求められることがあります。
税金にも注意
財産分与で受け取った財産には、原則として贈与税はかかりません。ただし、家を渡す側には、時価で売ったとみなされて譲渡所得税がかかる場合があります。家を売るか渡すかを決める前に、税理士や不動産会社に相談しておくと安心です。
財産分与で損しないために離婚前にやっておきたい準備
財産分与で一番多い失敗は、相手の財産をきちんと把握できないまま話し合いを始めてしまうことです。離婚を切り出す前に、次の準備を進めておきましょう。
- 夫名義の銀行口座(銀行名・支店名)をメモしておく
- 給与明細や源泉徴収票のコピーを取っておく
- 生命保険・学資保険の証券を確認する
- 証券口座や確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)の有無を確認する
- 勤務先の退職金制度を調べておく
- 家の登記簿謄本と住宅ローンの残高を確認する
- 家の今の価値を不動産会社の査定で調べておく
- 結婚前からの自分の預金など、特有財産の証拠を残しておく
別居する場合は、別居を始めた日が財産分与の基準日になるのが一般的です。別居前に財産の状況を確認しておくことが大切です。
家の価値は、複数の不動産会社に査定を依頼すると相場が分かります。売るかどうか決めていない段階でも、査定だけ依頼することができます。
よくある質問(FAQ)
Q. 専業主婦の期間が短くても半分もらえますか? A. 結婚期間の長さに関係なく、結婚してから築いた財産は原則2分の1です。ただし結婚期間が短いと、分ける財産そのものが少なくなります。
Q. へそくりも財産分与の対象になりますか? A. 生活費をやりくりして貯めたへそくりは、共有財産として対象になるのが一般的です。
Q. 子ども名義の預金はどうなりますか? A. 夫婦の収入から積み立てた子ども名義の預金は、共有財産として扱われることがあります。お年玉など子ども自身がもらったお金は対象外です。
Q. 自分が離婚を切り出した場合でも財産分与はもらえますか? A. もらえます。どちらが離婚を切り出したかは、財産分与の割合に関係ありません。
Q. 財産分与と慰謝料・養育費は別ですか? A. 別です。財産分与は夫婦の財産の清算、慰謝料は精神的な苦痛への賠償、養育費は子どもの生活費です。それぞれ分けて取り決めましょう。
Q. 相手が財産を隠しているかもしれません。どうすればいいですか? A. 調停や裁判になれば、裁判所を通じて銀行などに情報の開示を求める方法があります。早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
よくある質問(FAQ)
Q. 専業主婦の期間が短くても半分もらえますか? A. 結婚期間の長さに関係なく、結婚してから築いた財産は原則2分の1です。ただし結婚期間が短いと、分ける財産そのものが少なくなります。
Q. へそくりも財産分与の対象になりますか? A. 生活費をやりくりして貯めたへそくりは、共有財産として対象になるのが一般的です。
Q. 子ども名義の預金はどうなりますか? A. 夫婦の収入から積み立てた子ども名義の預金は、共有財産として扱われることがあります。お年玉など子ども自身がもらったお金は対象外です。
Q. 自分が離婚を切り出した場合でも財産分与はもらえますか? A. もらえます。どちらが離婚を切り出したかは、財産分与の割合に関係ありません。
Q. 財産分与と慰謝料・養育費は別ですか? A. 別です。財産分与は夫婦の財産の清算、慰謝料は精神的な苦痛への賠償、養育費は子どもの生活費です。それぞれ分けて取り決めましょう。
Q. 相手が財産を隠しているかもしれません。どうすればいいですか? A. 調停や裁判になれば、裁判所を通じて銀行などに情報の開示を求める方法があります。早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
まとめ:専業主婦でも財産分与は原則半分。準備が取り分を守る
専業主婦(主夫)でも、結婚してから夫婦で築いた財産は原則2分の1を受け取れます。2026年4月の民法改正でこのルールが法律に明記され、請求期限も離婚から5年に延びました。
一方で、相手の財産を把握できていなければ、正しく分けることはできません。離婚を切り出す前に財産を洗い出し、家がある場合は今の価値を査定で確認しておきましょう。迷ったときは、弁護士や専門家に早めに相談するのがおすすめです。
※本記事は2026年10月時点の法令をもとにした一般的な解説です。個別の事情によって結論は変わるため、具体的なケースは弁護士にご相談ください。










